高卒採用には、大卒採用に比べて採用コストを抑えられ、計画的な人材確保がしやすいというメリットがあります。

その一方で、実際に取り組もうとすると、次のような不安や疑問を抱える企業も少なくありません。

  • 高卒採用は本当にコストメリットがあるのか?
  • 高卒人材はすぐ辞めてしまうのではないか?
  • 現場で通用するスキルを持った人材はどうやって見つければいいのか?

本記事では、こうした疑問を解消しながら、高卒採用に取り組むことで得られる5つの具体的なメリットを、データ及び実例を通じてご紹介します。

「人手不足だが採用費に限りがある」という企業こそ、高卒採用が持つ可能性に目を向けることで、新たな解決方法に近づくことができるかもしれません。

高卒採用が注目される背景と市場の変化#

近年、高卒採用への注目が集まっています。その背景には、企業の人手不足や少子化の影響があります。

まずは、現在の高卒採用市場がどのように動いているのか、実際のデータをもとに見ていきましょう。

高卒就職希望者は約13万人#

令和6年3月時点の全国の高校卒業予定者は約92万5千人で、そのうち就職を希望している生徒は129,907人でした。就職希望率は14.0%で、前年とほぼ変わりありません。

さらに、就職を希望した生徒のうち127,266人が実際に就職しており、就職率は98.0%と非常に高水準を維持しています。男女別では、男子98.4%、女子97.2%と大きな差は見られません。

以下は、全国集計の概要です。

区分人数割合
卒業予定者925,339人100.0%
就職希望者129,907人14.0%
就職者127,266人98.0%

一方、都道府県別に見ると就職率には地域差もあります。

就職率が高い県福島県:99.9%富山県:99.9%福井県:99.8%
就職率が低い県沖縄県:90.7%神奈川県:91.9%千葉県:95.3%

これらのデータから、高卒人材のニーズが根強いこと、また地域によって就職環境にばらつきがあることが分かります。企業側は、採用戦略を立てるうえで、こうした実情を把握しておく必要があります。

高校生の求人倍率は3.70倍に上昇#

2024年7月末時点での高校新卒者の求人倍率は、3.70倍に達しています。これは、1人の高校生に対し、企業が3.7件の求人を出している計算です。

背景には、中小企業を中心とした深刻な人手不足があります。高卒人材を「早期に育てて長く活躍してもらいたい」と考える企業が増え、求人数自体が大きく伸びている状況です。

最新のデータでは、高校新卒者向けの求職者数は約12.6万人(前年比-0.1%)、一方で求人数は約46.5万人(前年比+ 4.8%)となっています。

求職者数がほぼ横ばいであるのに対し、求人が増えたことで倍率が上昇し、特に地方では企業の採用意欲が高まっています、スピード感のある対応が求められており、高卒採用を検討する企業にとっては、今こそが採用戦略を練るチャンスと言えるでしょう。

参考記事:文部科学省「令和6年3月新規高等学校卒業者の就職状況(令和6年3月末現在)に関する調査について

厚生労働省「令和6年度「高校・中学新卒者のハローワーク求人に係る求人・求職状況」取りまとめ(7月末現在)

高卒採用の5つのメリット#

コスト削減や即戦力の確保など、多くの企業が高卒採用の価値を見直し始めています。ここでは、高卒採用を進めるうえで知っておきたい5つのメリットを紹介します。

①採用コストは大卒の半分以下で済む#

高卒採用は、大卒と比べて広報にかかる費用を抑えられます。その理由は、就職活動の流れが学校推薦中心であるためです。

大卒採用では、就職ナビサイトへの掲載費や説明会の開催費、さらにインターン対応における交通費や人件費などが発生します。

一方で高卒採用の場合は、ハローワーク経由で求人を出すのが基本で、説明会も学校訪問で完結します。1人あたりの採用単価は10~50万円とされており、大卒採用(70〜100万円前後)と比較しても、かなり負担が軽くなります。

②内定辞退が少なく採用計画が安定する#

高卒採用では学校推薦制を使うケースが大半であり、内定辞退のリスクが少ないという特徴があります。

推薦制では、生徒が応募する企業を1社に絞ったうえで、学校が責任を持って推薦します。そのため、企業と生徒がマッチした段階で、ほぼ内定=入社確定と考えられます。

大卒採用のように、複数社を並行して応募する「自由応募制」では内定辞退が多く、計画通りに人材が確保できないこともあります。一方で、高卒採用は内定承諾率が高く、人員計画が狂いにくいのが大きなメリットです。

③学校との関係構築で毎年採用できる#

高卒採用は、一度学校との信頼関係を築ければ、毎年継続して生徒を紹介してもらえる採用ルートに変わります。これが大卒採用とは異なる、構造的なメリットです。

たとえば、以下のような取り組みが有効です。

  • 定期的な学校訪問
  • 卒業生の活躍報告
  • インターン受け入れや職場見学の実施
  • 顧問や進路指導担当とのこまめな連絡

こうした積み重ねによって、翌年以降もスムーズに生徒を紹介してもらえる環境が整い、安定して人材が確保できるようになります。

紹介が安定すれば、求人倍率が高くても他社との競争に巻き込まれにくくなるでしょう。

④部活経験者は現場で即戦力になりやすい#

高卒採用で多く見られるのが、部活動に打ち込んできた生徒です。こうした人材は、実務経験がなくても現場での即戦力になりやすい傾向があります。

理由は次の通りです。

  • 早朝練習や遠征で体力と時間管理に慣れている
  • 上下関係や礼儀を身につけている
  • 指示を素直に受け入れる姿勢がある
  • 繰り返しに強く、根気よく取り組む力がある

このように、社会人経験がなくても、「現場力」や「人間力」に長けた人材が揃いやすいのが高卒採用の強みです。

⑤若手採用が社風や社員意識を変える#

高卒人材を受け入れることは、社内の雰囲気や仕事への意識を前向きに変えるきっかけになります。先輩社員が教える立場になることで、仕事に対する責任感が芽生えるからです。

また、職場に若い世代が加わることで、以下のような変化も期待できます。

  • 社内の会話が増え、雰囲気が明るくなる
  • マニュアルや教育体制の見直しが進む
  • 平均年齢が下がり、活気が出る

結果として、会社全体の組織力が高まり、離職率やミス削減にもつながります。高卒採用は単なる人手確保ではなく、組織改善の起点にもなり得るのです。

高卒採用の4つのデメリット#

高卒採用には数多くのメリットがある一方で、構造上の課題も存在します。とくに初めて高卒採用に取り組む企業は、スケジュールや制度の仕組みを理解しないまま進めてしまい、結果として採用活動が空振りになることもあります。

ここでは、高卒採用を始めるうえで事前に知っておきたい4つのデメリットを紹介します。

①採用スケジュールが厳しく柔軟性がない#

高卒採用には厳格なスケジュールがあり、企業の都合だけで進めることができません。求人票の公開開始は毎年7月1日からと決められており、応募受付は9月5日以降、選考開始は9月16日以降と定められています(令和6年度時点)。

このルールによって、以下のような制約が生まれます。

  • 採用開始前に学生と早期接触することが禁止されている
  • 中途や大卒のように、時期を問わず採用をかけることができない
  • 面接・内定通知の時期も明確に決められている

準備を早く始めても動けるのは7月以降となるため、毎年のスケジュールを逆算して計画を立てる必要があります。

②応募者が少なく選考の幅が狭い#

高卒採用では、母集団の形成が難しいという現実があります。学校推薦が前提となるため、生徒は1社しか応募できず、求人を出しても応募者がゼロという状況が起きやすくなります。

応募が集まりにくくなる主な要因は、以下のとおりです。

  • 都市部や知名度の高い企業に応募が偏りやすい
  • 仕事内容や社風が十分に伝わらず、興味を持たれにくい
  • 「知らない会社は選ばれない」という現実

また、せっかく1人から応募が来ても辞退されたら採用不成立です。限られた母集団のなかで確実に採用するには、わかりやすい求人づくりと丁寧な関係構築が欠かせません。

③社会経験がなく教育に手間がかかる#

高校を卒業したばかりの新入社員は、社会人の基本をまったく知らない状態からスタートします。仕事のスキル以前に、ビジネスマナーや意識づくりから丁寧に教える必要があります。

たとえば、以下のような教育項目は入社時点では身についていないことがほとんどです。

  • 敬語の使い方や身だしなみの整え方
  • 上司への報告や指示の受け方
  • 出社時間の意識や勤怠ルールの理解
  • 職場の雰囲気やチームで働く意味

そのまま放置すると、先輩とのすれ違いや職場トラブルにつながる可能性もあります。

育成には時間と体制が欠かせません。マニュアルの整備やOJT体制を事前に用意しておくことで、スムーズに成長させることができます。高卒採用は「教育込み」で捉えることが大切です。

④仕事のミスマッチが起きやすい#

高校生の多くは、職業観がまだ十分に育っておらず、業界や仕事内容を正確に理解しないまま志望を決める傾向があります。その結果、入社後に「思っていた仕事と違う」と感じて戸惑うことがあります。

ミスマッチが起きやすい要因は、以下のとおりです。

  • 仕事内容のイメージが曖昧なまま応募している
  • 勤務時間や休日体系について深く理解していない
  • 学校で得た情報だけで判断しているケースが多い

こうしたズレを防ぐには、事前の情報提供が欠かせません。職場見学や現場社員との懇談会を通じて、仕事の流れや雰囲気をリアルに体感してもらいましょう。先にギャップを埋めることで、入社後の離職リスクを減らせます。

高校採用を成功させる攻めのアクション3選#

高校生を採用するには、ただ求人票を出すだけでは不十分です。学校推薦を前提とした採用活動では、先生に紹介してもらえる会社になることが重要です。

ここからは、高卒採用の成果につながる実践的なアクションを3つ紹介します。

①学校とのつながり強化で地域での企業認知を高める#

進路指導担当や部活動の顧問が「この会社は信頼できる」と感じているかどうかが、推薦の有無を左右します。

企業名を覚えてもらうには、以下のような地域の学校と関係を築く活動が効果的です。

  • 運動部へのドリンク提供や備品の寄贈
  • 文化祭や体育祭への協賛金支援
  • 職場見学やインターンの受け入れ
  • 卒業生の活躍報告や定期的な学校訪問

たとえば地元の高校に定期的に訪問し、先生に「〇〇さんは元気に働いています」と卒業生の様子を伝えるだけでも、企業への信頼度は変わります。こうした積み重ねで、翌年以降も安定して推薦を受けられるようになります。

②部活動のスポンサーで企業認知を高める#

部活動を支援する企業スポンサーになると、学校内だけでなく保護者や地域の住民にも企業名を自然に広めることができます。日常の教育活動に関わることで、信頼と親近感が自然と生まれやすくなるからです。

たとえば、次のような支援活動が挙げられます。

  • ユニフォームや部旗の提供
  • 大会や遠征費用の一部負担
  • 応援ポスターやパンフレットの作成

支援が継続すれば「応援してくれる会社」として生徒・先生・保護者の記憶に残り、推薦されやすい土台をつくれます。

こうした活動を本格的に取り入れたい企業には「Bスポンサーズ」の活用がおすすめです。

Bスポンサーズは、部活動とのマッチングを一括でサポートしてくれるサービスで、部活動スポンサーが初めてでも取り組みやすい仕組みになっています。全国の高校に対応しており、地域を問わず導入が可能です。

スポンサー活動の具体的な進め方については、以下の記事で詳しく解説しています。

>>部活動のスポンサーになるには?具体的な手順と地域応援制度の活用メリットを解説

③入社後の育成体制が離職率を下げる#

高卒採用の離職率を下げるには、採用の段階だけでなく入社後の育成体制を整えることが重要です。

まずは、働くうえで欠かせない基本行動から教えることが必要です。たとえば以下のような内容が挙げられます。

  • あいさつや敬語などの社会人マナー
  • 報連相の練習や相談のしかた
  • OJTや新人向け研修の整備
  • 年齢の近い先輩社員を育成担当として配置

さらに、困ったときに相談できる窓口を設けたり、メンター制度を導入したりすることで、孤立を防げます。

「誰が教えるか」だけでなく、「どう教えるか」をマニュアル化しておくと、現場の負担を減らせるでしょう。

高卒採用に関するよくある質問#

高校生の採用に初めて取り組む企業にとっては、年間スケジュールや手続き、育成体制などわからないことが多いものです。ここでは、高卒採用に取り組むうえでよくある質問を紹介します。

高卒採用はどの時期から準備を始めるべき?#

高卒採用では、法律で定められたスケジュールに沿って動く必要があります。求人票を出せるのは6月以降ですが、実際にはもっと前からの準備が不可欠です。

準備すべき内容は時期ごとに異なります。以下をご覧ください。

時期やるべきこと
4月~採用人数の確定、職種や条件の見直し
6~7月ハローワークでの求人申請、学校訪問、職場見学の準備
7~8月見学対応、応募前説明の実施
9月中旬〜面接実施、内定通知、入社準備

求人票はどこに出せばよい?必要な手続きとは?#

高校生向けの求人は、一般の求人媒体には掲載できません。必ずハローワークを経由して手続きを行う必要があり、提出時期は毎年6月以降と決まっています。

具体的な流れは以下のとおりです。

  1. 管轄のハローワークで「高校卒業予定者向け求人票」を提出
  2. ハローワークが各高校に求人情報を提供
  3. 高校が推薦生徒を選定し、企業に応募

求人票には「仕事内容」「初任給」「昇給や賞与の有無」「休日」「勤務時間」などを正確に記載する必要があります。

高卒採用に向いている企業の特徴とは?#

高卒人材は社会経験がない状態で入社するため、教育を前提とした受け入れ体制がある企業に向いています。

向いている企業の特徴は以下のとおりです。

  • OJTや新人研修など育成の仕組みがある
  • 20代の先輩社員が在籍していて相談しやすい
  • 報連相などを丁寧に教える文化がある
  • 長期的な視点で人を育てる風土がある

たとえば、毎朝の朝礼で挨拶や声がけの練習をするだけでも、高卒社員が職場になじみやすくなります。

高卒採用は失敗しやすい?成功企業との違いとは?#

高卒採用でつまずく企業には、以下のような共通点があります。

  • 選考時期や応募ルールを把握せず、募集が遅れる
  • 新人育成を現場任せにしてしまう
  • 配属先にフォロー体制がなく、相談できない環境になる
  • 入社後すぐに実務を任せ、孤立させてしまう

一方で、成功している企業では、育成計画と担当者の配置まで事前に準備しています。たとえば、1人の新人に対して年齢の近い先輩をメンターとして1人つけるだけでも、離職率は大きく下がります。

採用の成否は、採用活動よりも入社後の設計にかかっているといえるでしょう。

まとめ#

この記事では、高卒採用に取り組む企業が得られるメリットや、スムーズに進めるための育成・学校連携の実践法について解説しました。

学校との関係を築けば毎年紹介が得られるようになり、長期的に安定した採用ルートが確保できます。

人手不足に悩む今こそ、高卒採用は企業の未来を変える大きなチャンスです。採用から育成までの設計を整えて、地元の高校とつながってみてください。

また、高卒採用を本格化したい企業の方は、以下の記事も参考にしてください。

>>高卒採用で地元人材を確保!高校×企業のタッグで成果を出す方法を徹底解説