高卒採用で地元人材を確保する動きが、企業の間で注目を集めています。人手不足が深刻になるなか、地元の高校生に目を向けることが、安定的な採用につながると考える企業が増えているからです。

とはいえ、いざ地元採用を始めようとしても、次のような悩みに直面する企業が多いのも事実です。

  • 高校とつながるには、何から始めればいい?
  • 県外企業との競争でどうアピールすればいい?
  • 一人一社制の中でどうやって選ばれる?
  • 内定後のフォローは何をすればいい?

本記事では、こうした疑問に答えながら、地元高校と連携して高卒人材を採用する具体的な方法を紹介します。

校内選考や教員との関係づくりといった制度上のポイントはもちろん、高校生に選ばれる企業になるための工夫まで、実践的な情報をお届けします。ぜひ参考にしてください。

高卒採用で地元人材確保が注目されている理由#

近年は、地元で働きたいと考える高校生が増えており、継続的な人材確保として高卒採用が注目されています。

地元志向が強まり県外就職数は減少傾向#

厚生労働省が公表している「令和6年3月卒業の新規高卒者の職業紹介状況」によると、県外就職者数は年々減少傾向にあります。

以下の表は、高校卒業者における県外就職者の推移です。

卒業年県外就職者数対前年比県外就職率
平成30年35,390人-1.3%20.7%
平成31年36,055人+1.9%21.1%
令和2年35,000人-2.9%21.0%
令和3年28,773人-17.8%19.7%
令和4年25,426人-11.6%19.0%
令和5年24,817人-2.4%19.6%
令和6年24,660人-0.6%20.5%

出典:厚生労働省「一般職業紹介状況(職業安定業務統計) / 新規学卒者(高校・中学)の職業紹介状況 / 令和6年度 第1 令和6年3月新規学卒者(高校・中学)の職業紹介状況 1 結果の概要

ピーク時の平成31年に比べると、県外就職者数は11,395人減少しています。特 とくに令和3〜4年にかけては急激な落ち込みが見られ、その背景にはコロナ禍の影響や地元志向の強まりがあると考えられます。

以前は「県外就職が当たり前」という風潮もありました。しかし、今ではその流れが変わりつつあり、地元就職が現実的な進路として高校生の中に根付きつつあります。

地元高校と連携すれば人材確保が持続可能になる#

大卒や中途人材に比べ、高卒人材は地域密着型の取り組みが採用につながりやすい傾向があります。

なぜなら、地元の高校は毎年安定的に新卒人材を輩出しており、その進路決定には学校側の影響が大きく関わっているからです。実際に進路指導の先生が安心して送り出せると判断すれば、翌年以降も自然と推薦や紹介が得られるようになります。

さらに「昨年入社したA君が活躍している」「離職者が少なく職場環境も良い」といった具体的な成功事例は、先生方の信頼につながり、学校内外で企業の評判が広がるきっかけになります。

このように、地元高校と信頼関係を築くことができれば、“その年限り”の採用ではなく、“積み上がる採用”へとつながっていくのです。

地元の高卒採用における企業課題#

「高卒採用を始めたけれど、なかなか思うように人材が集まらない…」と感じる企業には、以下のような共通の課題があります。

  • 校内選考が企業の採用基準とズレる可能性
  • 教員との関係がないと推薦がもらえない
  • 一人一社制が採用チャンスを狭めている
  • 採用条件だけで県外企業に埋もれてしまう
  • 入社後のフォロー不足が早期離職を招く

校内選考が企業の採用基準とズレる可能性#

高卒採用に取り組む企業が直面する課題の1つに、校内選考と自社の採用基準のズレがあります。

校内選考とは、生徒が企業に応募する前に学校側で推薦候補を決める制度です。人気企業には希望者が集中するため、学校が誰を推薦するかを選定します。ここでは、内申点やテストの成績が重要視されることが多く、成績が優秀な生徒から順番に推薦先を選ぶ流れになっている場合がほとんどです。

しかし、企業が求めているのは、必ずしも勉強ができる生徒ではありません。素直さや前向きな姿勢、明るさなど、成績だけでは分からない「人間性」を重視している企業も多いです。

それにもかかわらず、人間的な魅力を持つ生徒が校内選考の段階で推薦枠から漏れてしまうと、企業との接点すら持てなくなってしまいます。これは生徒が悪いわけではなく、評価基準が学校と企業で一致していないことが原因です。

教員との関係がないと推薦がもらえない#

高卒採用では、教員との信頼関係を築くことは非常に重要です。なぜなら、先生とのつながりがなければ推薦自体が得られにくく、応募数が伸びない原因となるからです。実際に、初めて高卒採用に取り組む企業が直面しやすいのが「学校とのつながりがない」という壁です。

多くの高校では、推薦を出す企業を選ぶ際に、実質的に「指定校制」に近い運用がされています。つまり、これまでに採用実績のある企業や、進路指導の先生が信頼を寄せている企業に推薦が集中しやすいのです。

さらに、推薦状は担任教員が作成しますが、企業との接点が薄いと内容も形式的になりがちです。「協調性があります」「真面目な生徒です」といった当たり障りのない文面では、生徒の個性や熱意が伝わらず、企業側も魅力を感じにくいのが実情といえるでしょう。

一人一社制が採用チャンスを狭めている#

高卒採用には、「一人一社制」というルールがあります。これは、生徒が最初に応募できるのは1社だけという制度で、生徒間の公平性を保つために設けられたものです。しかし、企業側から見ると、採用のハードルが高くなるデメリットがあります。

たとえば、せっかく応募してほしいと思っていた生徒が別の企業を選んでしまったら、もうチャンスはありません。特に求人が少ない地域では、生徒も「とりあえず受かりそうなところ」を選びがちで、企業と生徒の希望が噛み合わないケースも出てきます。

さらに、「一人一社制」には以下のような地域差も存在します。

都道府県一人一社制の期間応募枠の緩和時期
全23都道府県(東京都、青森県、宮城県など)9月末まで10月以降(2社まで)
茨城県最初から2社まで応募可
秋田県最初から3社まで応募可

つまり、多くの地域では9月の採用が勝負であり、この時期に「選ばれる企業」になれないと、採用数の確保が難しくなります。

採用条件だけで県外企業に埋もれてしまう#

求人票を出すとき、多くの企業が気にするのが給与や福利厚生といった条件面です。しかし、そこだけで勝負すると都市部の大手企業に埋もれてしまいます。

高校に届く求人票は、全国の大手企業からの情報も多く、月給や手当の数字だけを見ると、地元企業よりも魅力的に映ってしまうのが現実です。

しかし、働く上で大切なのは求人票の条件だけではありません。「実家から通える」「地元の先輩がいる」「地元に貢献できる」「家族と過ごす時間が多い」など、地元企業ならではの魅力もたくさんあります。

そのため、以下のような価値を求人票や説明会で伝えることが大切です。

  • 通勤時間が短くその分時間の有効活用ができる
  • 社内の雰囲気があたたかく相談しやすい
  • 地域貢献や地元密着型の事業に携われる
  • 同じ学校の先輩がいる安心感

こうした数字に表れない魅力を丁寧に伝えることで、「ここで働きたい」と思ってもらえるきっかけになります。

入社後のフォロー不足が早期離職を招く#

どれだけ採用に力を入れても、定着しなければ人材確保にはつながりません。

なかでも高卒社員は、社会経験がほとんどない状態で入社してきます。職場の雰囲気に馴染めなかったり、小さな不安を相談できなかったりすると、それが離職の引き金になってしまうこともあります。

このようなリスクを防ぐには、現場のOJTだけではカバーしきれない部分を支える、段階的なフォロー体制が必要です。たとえば、入社後3ヶ月間、週1回のペースで面談を行い、「困っていないか」「業務が理解できているか」をチェックするだけでも大きな違いが生まれます。

こうした丁寧なフォローが、「この会社で続けていこう」という気持ちを生み出す土台となるのです。

【地元高校×企業】高卒採用で成果を出す4つの取り組み#

地元の高卒採用における企業課題を見てきましたが、実際に成果をあげている企業は以下のような取り組みを行っています。

  • ①部活動支援を通じて高校とつながる「Bスポンサーズ」を活用
  • ②パワポよりも職場見学に力を入れる
  • ③地元イベントや合同説明会に参加する
  • ④若手社員の活躍を発信する

①部活動支援を通じて高校とつながる「Bスポンサーズ」を活用#

「教員と関係を築くきっかけがない」という悩みを解消できるのが、部活動支援を通じた採用アプローチ「Bスポンサーズ」です。

Bスポンサーズは、企業が高校の部活動を金銭的にサポートすることで、自然に教員や保護者との接点を生み出せる仕組みです。

Bスポンサーズを活用すると、以下のような効果が期待できます。

企業側のメリット高校生と早期に接点を持てる  数年単位での人材確保につながる  採用活動の認知度や信頼度が高まる  地域貢献として社内外で評価されやすくなる
部活動側のメリット運営資金(ユニフォーム・遠征費など)が安定  保護者の経済的負担を軽減できる  顧問の管理業務が軽くなる  継続的に活動できる環境が整う
解決できる課題進路指導教員との接点がつくれない  内申点重視の校内選考で採用が難しい  求人票を出しても応募が集まらない  一人一社制でアプローチ先が限られる

支援企業には、採用情報の掲出や職場見学の機会提供といったオプションも用意されており、採用活動につながる接点づくりが可能です。「まずは先生と話せる関係をつくりたい」という企業は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

なお、部活動のスポンサーに関しては以下の記事で詳しく解説しています。

>>部活動のスポンサーになるには?具体的な手順と地域応援制度の活用メリットを解説

②パワポよりも職場見学に力を入れる#

高校生にとって、言葉やスライドだけの説明では仕事のイメージが湧きにくいのが実情です。だからこそ、説明会ではパワーポイントに頼るのではなく、実際の職場を見せることが大切です。

たとえば、工場で働く社員の姿や作業の流れを間近で見ると、「こんな仕事なら自分にもできそう」と具体的なイメージが湧きます。

とくに、以下のような内容を取り入れると、仕事への理解が深まりやすくなります。

  • 現場体験:作業工程を直接見せる
  • 若手社員との座談会:年齢が近い先輩からリアルな声を聞ける
  • 部署ツアー:仕事の流れや雰囲気を体感
  • 短時間体験:実際の業務を一部やってみる

たとえば「ネジを1つ締める作業」を体験してもらうだけでも、五感に残る印象がつくれます。一方で、スライド資料だけの説明会では、どんな仕事かまったく想像できず印象に残りません。

「百聞は一見にしかず」という言葉のように、資料やスライドでは伝えきれない“空気感”を、職場見学で届けましょう。

③地元イベントや合同説明会に参加する#

地元高校と関係をつくるには、企業単体で動くだけでは限界があります。もっとも確実なのは、地域の合同説明会や進路イベントに参加して、学校や先生、生徒との接点を増やすことです。

以下に、代表的なイベントと特徴を整理しました。

イベント名対象開催時期効果
合同企業説明会高校3年生6月~7月応募につながりやすい
企業研究会全学年・教員・保護者通年認知度と信頼構築
地元産業フェア地域住民・全世代地域によって異なる地域密着による印象アップ
インターンフェア高校1~2年生夏・冬休み早期接点を確保できる

なお、これらの場はあくまで企業理解の促進が目的なので、応募意思の確認や囲い込みはNGです。

生徒は気軽に参加しやすく、企業は純粋なブランディングと関係構築に集中できる貴重な時間となります。

④若手社員の活躍を発信する#

採用の決め手は「ここで働く自分を想像できるかどうか」です。そこで効果的なのが、若手社員の働く姿やリアルな成長エピソードの発信です。

たとえば、入社2年目で後輩の指導を任された社員の話は、高校生にとって「自分にもできそう」と勇気を与える材料になります。何年目でどんな業務をしているのかが具体的にわかると、入社後の成長イメージが一気に広がります。

以下は、効果的な情報発信のポイントです。

  • 入社からの成長過程:いつ何を任されどう変化したか
  • 一日の仕事の流れ:時間ごとの動きや仕事内容
  • 仕事以外の魅力:先輩との関係、地域イベント、休みの過ごし方
  • 本人の言葉:SNSや社内報などでの本人の声

このような情報を意識して発信することで、高校生や学校関係者にも企業の魅力が伝わりやすくなります。

地元の高卒採用に関するよくある質問#

ここでは、地元の高卒採用に関するよくある質問をまとめました。

Webでの情報発信はどこまで効果がある?#

高校生にとってLINEやYouTubeは日常的に使うツールですが、企業探しに活用しているわけではありません。そのため、採用サイトやSNSを単体で運用しても、思ったような反応が得にくいのが現実です。

ただし、職場見学や学校訪問と組み合わせると、Webは記憶を定着させる補助ツールとして活きてきます。「あの時行った会社、こんな投稿してる」といった印象づけができれば、志望度を高めることにもつながるでしょう。

県外の高校から採用するのは難しい?#

地元外からの採用は制度上可能ですが、実務的なハードルは高めです。それは、求人情報が高校まで届きにくく、先生や生徒が企業のことを知らないまま終わることが多いためです。

また、18歳での県外就職には、引っ越しや住居探し、生活費などの経済的負担が大きくのしかかります。保護者から「知らない土地には行かせたくない」と反対されるケースも少なくありません。

高校生向けの採用サービスは利用すべき?#

高卒向けの求人サイトや就活サイトをうまく組み合わせることで、効果的に母集団を形成できます。ただし、サービスに丸投げでは成果は出ません。

サービス経由で出会った生徒の定着率を左右するのは、企業側の受け入れ体制(OJT制度やメンター制度など)が整っていることが重要です。

求人サービスは出会いの場をつくってくれますが、人材をつなぎとめるには自社の取り組みが不可欠です。採用サービスはあくまで補完ツールとして活用し、自社の魅力をリアルで伝えることも並行して進めましょう。

まとめ#

この記事では、高卒採用で地元人材を確保するための課題と対策、そして高校との信頼構築の手法を解説しました。

安定的に人材を採用したい企業こそ、制度を正しく理解し、地元高校と関係を築く工夫が必要です。

たとえば、職場見学の実施や若手社員の活躍を発信することに加え、「Bスポンサーズ」のような部活動支援で教員との接点をつくることで、より成果につながりやすくなります。をつくる

求人票だけでは伝わらない魅力ややりがいを、丁寧に伝えることが大切です。そのうえで、入社後もOJTや定期面談でしっかり支えてあげましょう。

部活動人材の活用法については以下の記事で詳しく解説しています。